こんにちは、神山です。
10月中旬から、11月初旬まで日本に一時帰国をしていました。
今年は、台風や大雨の影響で、私の住んでいる千葉でも大きな被害がありました。
改めて自然の力、怖さを思い知らされました。
被災された方々には、心からお見舞いを申し上げます。
前回のブログで、Sahyadri College of Engineering & Managementの
学内企業化のお話をさせて頂きましたが、
今回は、私たちが工科大学と連携して共同研究についてお話をさせて頂きます。
バンガロールで最も設立が古く、最も優秀(*1) な工科大学(R V College of Engineering)と
自然言語(英語や日本語の文章)で、データを検索できるようにする仕組み:AI(自然言語処理)の共同研究を行っています。
*1:インド政府NIRF発行大学ランキングより
Google等の検索機能を使って、膨大なインターネット上のデータから、
欲しい情報を検索するのは多くの方が利用されていると思います。
また、企業内でも色々な業務で蓄積されたデータ(情報)を、
様々なツールを使って利活用していると思います。
弊社の製品では、Excellent/WebQueryがそのツールになり
一般的にはBIツールと言われています。
私は、コンピュータに詳しくない方でも、もっと手軽に情報を利活用できないかと考えており
その1つの解決案として、自然言語で情報が検索出来たらな と思い、この研究を始めました。
既に、出来ている仕組みもあるかも知れませんが、自分たちの手で1つ1つ問題をクリアし、
実現に向け進むことが大切だと思い、あえて、私たちの社員(インドエンジニア)と
工科大学でコンピュータサイエンスを学んでいる学生との共同研究を始めました。
このプロジェクトでは、コンピュータサイエンスの学部長や教授にも協力して頂きながら
悪戦苦闘し、そして楽しみながら進めています。
今回のブログでは、技術の話ではなく、その悪戦苦闘を書きたいと思っています。
初回のプロジェクトミーティングの時に、私たちが考えている事、初期段階の進め方を
教授や学生に説明するのは、基本的には私たちのインドエンジニアが行ってくれました。
自分が思っている事は英語が出来ないながらも、ホワイトボードに絵や処理の流れを
書きながら説明したのですが、思うように伝わらなかったり、
不思議そうな顔をされたりしましたが、何とか思いを伝えることができました。
このようなやり取りを繰り返しながら、少しづつプロジェクトが進み、
今では簡単な英語であれば、データが検索できるようになりました。
簡単な例としては、”去年の黄色いTシャツの売り上げは?” と
投げかけると、該当の売上データが分かるということです。
ただ、少し複雑な問いかけになると、誤った答えが返ってきたり、
そもそも答えすら返ってこない、という壁にぶち当たりました。
そんな中、日本語でも教授や学生、インド人エンジニアと喧々諤々議論するのは難しいのに、
英語が出来ない私でも(もちろんエンジニアのサポートが大きいのですが)、
プロジェクトを進めることができました。
お陰様で、絵の表現力、ホワイトボードに怪しげな英単語を書いての説明力は
向上したと思います。(笑)
壁にぶつかるたびに、1つ1つ壁の穴をこじ開け、少し進んではかなり後退
みたいな繰り返しをしている中で、20年くらい前に、
BIツール(当時はこんな名前も無かったですが)を立ち上げた頃の面白さを思い出しました。
出来上がっているものを改善し、維持するという大変さもありますが、
何も無いところから積み上げていく大変さも、出来るだけ多くの若いエンジニアに
経験してほしいなと思います。
私たちと一緒に頑張ってくれた学生は、研究を通して自分の技術力を向上させ、
より良いIT企業に入りたい、アメリカに渡ってコンピュータサイエンスの博士号を取得したいなど目を輝かせながら話してくれます。
私たちが忘れてしまいがちな、貪欲さ、向上心の大切さを改めて感じたプロジェクトでした。
今、このプロジェクトは、学生が代替わりして次のフェーズにはいっています。
今回のフェーズは、自らデータの中身を分析し、自然言語で検索しやすい情報を
自動蓄積する機械学習にもチャレンジしています。
実は、このAI(自然言語処理)に関しては、前回の一時帰国時に日本で行われました。
Excellent/WebQueryフォーラムの中で、デモンストレーションも行わせて頂きました。
この技術を習得することで、出来るだけ早い時期に、BIツールをやさしく、
より多くのお客様に使っていただけるような機能として成熟させたいと思っています。
最後になりますが、AI(自然言語処理)を一緒に進めてくれた学生が書いた論文が、
2019/11/15~17にシンガポールで開催される国際会議(AISS)で正式に受理されることが
決まり、学生たちはこの期間シンガポールの会議に出席し表彰され、
論文も正式にアーカイブされることになりました。
この受賞により、学生たちの念願だった、アメリカの大学でコンピュータサイエンスの
博士号過程にすすめるチャンスが出来たとのことでした。
* 論文名:(ISQNL:Interpretable SQL Query synthesizer from Natural Language Input)
* AISS:2019 International Conference on Advanced Information Science and System
このような経験は中々できないですよね。
インドで苦労も多いですが、このような嬉しいことがあると、
また、次の一歩が踏み出せる気がします。