はじめに
近年、データはビジネスや研究の重要な資産として急速に認識されています。データドリブンによる意思決定が求められる中、多くの組織や機関が膨大なデータを収集・管理する課題に直面しています。データが増加する中で、それらのデータがどのようなものであり、どこにあるのかを把握することが困難になってきています。
このような課題に対する解決策として、データカタログが注目されています。データカタログは、組織内外のデータのメタデータや情報を集約・管理するプラットフォームであり、データの可視化や検索、利用促進を可能にします。
データカタログの詳細については、以下をご確認ください。
この記事ではデータカタログの役割や機能を確認しつつ、2つのケーススタディからデータカタログの効果を学習することができます。
Contents
データカタログの役割
まずデータカタログには、主に以下の役割があります。
データの可視化と検索
データの特性や属性、関連する情報を視覚的に表現し、効率的な検索をサポートします。これによりデータの場所や意味を理解するのが容易になります。
データ活用の促進
データカタログはデータの存在や利用可能性を明示化するため、データの再利用や共有を促進します。これにより、組織内でのデータ利用が活発化し、新たな洞察や価値の創出が期待されます。
品質の向上
データカタログはデータの品質情報を提供し、データの信頼性や正確性を向上させる役割を果たします。品質情報が明示されることで、意思決定におけるデータの信頼度が高まります。
データカタログはこれらの役割を担いつつ、データドリブンの組織文化を支え、効率的なデータ活用を実現する重要なツールとなっています。次の章では、データカタログの機能や要素について詳しく探っていきます。
データカタログの機能と要素
データの効率的な管理と利用を実現するために、データカタログは様々な機能と要素を備えています。これらの機能と要素が組織やプロジェクトにおけるデータカタログの価値を高め、活用を可能にしています。
データの可視化と検索機能
データカタログは、収集されたデータのメタデータや属性を視覚的に表現する機能を備えています。これにより、データの種類や特徴、関連する情報が一目で把握できます。また、強力な検索機能を提供することで、膨大なデータの中から必要な情報を迅速に見つけ出すことが可能です。
データのカタログ化と分類機能
データカタログはデータをカタログ化し、整理・分類する機能を有しています。データの種類や属性、関連性などに基づいてカテゴリ分けやタグ付けを行い、データの管理を効果的に行います。これにより、データが整然と組織され、利用が容易になります。
データへのアクセス制御機能
データカタログは、データへのアクセスを制御するセキュリティ機能を提供します。データの機密性や利用許可に応じてアクセス権限を設定し、適切なユーザーだけが必要なデータにアクセスできるようにします。これにより、データのセキュリティを確保しながら、効率的なデータ共有が可能です。
データの品質管理機能
データカタログは、データの品質管理を支援する機能を備えています。データの正確性、信頼性、完全性などの品質情報を収集・管理し、利用者が信頼できるデータを選択できるようにします。品質情報が明示されることで、データの適切な利用と信頼性の向上が実現されます。
データ利用の分析とレポート機能
データカタログはデータの利用状況やアクセス履歴を分析し、レポートを生成する機能を持っています。これによりデータの利用状況や需要の把握が可能となり、適切な意思決定やリソースの最適配置が実現されます。
これらの機能と要素がデータカタログの強力な武器となり、データドリブン型の組織文化を築く上で不可欠な役割を果たします。
データカタログの機能については、以下をご確認ください。
次の章ではデータカタログの活用事例を通じて、実際の活用方法について記載していきます。
ケーススタディ1 ~まるで社内の有識者!業務とデータを結び付けて社内で共有~
ある金融業のお客様では以下の背景・課題を解決するため、データカタログを内製化・活用しています。
背景・課題
- ユーザーからのデータに関するリクエストについて、応えられる有識者が限られていた
- データと業務を結び付ける情報が公開されておらず、有識者に質問が集中していた
- データに関する知識を共有できる仕組みを作り、属人化を防ぐ手立てを検討していた
※以下、補足説明
この企業では社内のデータ活用を促進するための組織が存在し、BIツールを使ったビジネスユーザー主体のデータ活用に取り組んでいました。
ビジネスユーザーが自らデータ活用を進めるポイントとなるのが「データと業務の紐づけ」です。例えばユーザーから、
といった業務を絡めた質問が来た場合、どちらか一方に詳しくても回答することはできません。データ、システム、業務全てに精通していて初めて正確な回答が可能になります。
こういった有識者の存在は非常に重宝されますが、一方でその人に質問が集中してしまいボトルネックになってしまうリスクも存在します。そういった課題を見据えて、この企業では有識者の代わりに成りうる手段を調査・検討していました。
課題への対策
上記の様な課題から、この企業ではデータカタログを内製化して公開しました。
ビジネスユーザーは、欲しいデータがあったらまずデータカタログを検索します。データに対する補足説明やテーブル、カラムといったメタデータを自分自身で調べて、見たい情報がどこに格納されているのか調べています。
その後はBIツールで自らデータを取得するところまでフロー化されており、ビジネスユーザー主体のセルフサービスBIを実現しています。
活用のメリット
データカタログを導入後、以下の様に業務が改善されました。
- ビジネスユーザーが目的のデータにたどり着くまでの時間が圧倒的に削減された
- 社内有識者への質問が減少、結果的に有識者が別の業務に力を注ぐことができた
- ビジネスユーザーのデータへの理解度、及びデータ活用に意識が高まった
ケーススタディ2 ~社内DXの切り札に!データ活用基盤のメタデータを一括管理~
あるITベンダーでは、社内DX実現のためSFAとCRMのデータを統合するデータ活用基盤を構築・公開しました。そこからデータを探す仕組みとしてデータカタログを利用しています。
背景・課題
- データ活用基盤を構築したが、どこにどのようなデータがあるのか分かりにくい
- お客様名や製品名といった実データが、実際にどのテーブルに格納されているのか知りたい
- データを集めたのは良いけど、ユーザー毎にアクセス可能な公開範囲を定めたい
※以下、補足説明
例えばDX促進のためデータ活用基盤を構築した、またはこれから構築予定の企業はそこそこ存在しているのではないでしょうか。この企業ではIT企業としてお客様にDX促進を提案するため、まず自社でDXを実現することを検討し、結果データ活用基盤を構築しました。
データ活用基盤の構築後、最もネックになったのは「データ活用基盤を構築したけど、結局データがどこにあるかわからないから人からデータをもらう」という本末転倒の結果でした。そのためこの企業ではユーザー自らメタデータを検索する仕組みの検討を開始しました。
またその他のユーザーからの要望として、
といった声も上がってきました。これらの要望を満たすようなツールが市場に存在するか、といったところも調査のポイントとなりました。
課題への対策
調査した結果、要望を満たすツールが存在しなかったため、この企業でもデータカタログを内製化して対応することにしました。以下、課題への対策です。
- データ活用基盤上で動作するデータカタログを内製化
- テーブル名やカラム名といったメタデータだけでなく、実データ自体も検索対象にすることでより目的のデータにアクセスしやすいように構築
- 利用中のBIツールで詳細なアクセス制御を実現していたため、データカタログ側でも同等のアクセス制御を実装
活用のメリット
データカタログを導入後、以下の様に業務が改善されました。
- 社内DXが促進され、営業やマーケティング自らがデータ活用をする意識が芽生えた
- 実データ検索の実装により、目的のテーブルを確認するまでの時間が短縮された
データカタログの選定と導入に向けて
データカタログは効率的なデータ管理と利用を実現する重要なツールですが、適切な選定と導入が成功の鍵となります。この章では、データカタログの選定と導入に向けてのポイントについて探っていきます。
ニーズの明確化と目的の設定
データカタログを選定する際には、組織のニーズや目的を明確にすることが重要です。データの種類や規模、利用目的、セキュリティ要件などを整理し、それに基づいてデータカタログの機能や要件を明確に設定します。
ユーザーの参画とフィードバック収集
データカタログの選定においては、実際に利用するユーザーの参画が不可欠です。ユーザーの意見やフィードバックを収集し、ニーズにマッチしたデータカタログを選定することで、導入後の受け入れや利用効果を高めることができます。
機能の比較と評価
データカタログの市場にはいくつかの製品やサービスが存在します。これらの機能や性能、価格を比較検討し、組織に適したデータカタログを選定します。また、デモやトライアルを活用して、実際の操作感や適用性を確認することも重要です。
今回のケーススタディでは2件ともにデータカタログを内製化することで対応していますが、まずはニーズを満たす製品が市場に投入されているか確認することをお勧めいたします。
適切な導入ステップの計画
データカタログの導入は、段階的に進めることが効果的です。小規模なプロジェクトや特定の部門から導入を始め、利用実績やフィードバックを基に拡大していくプランを立てます。適切な導入ステップの計画を立てることで、スムーズな導入が可能となります。
トレーニングとサポート体制の整備
データカタログの導入後は、適切なトレーニングとサポート体制が不可欠です。ユーザーがシステムを適切に活用できるよう、トレーニングプログラムを設定し、トラブル時のサポート体制を整備します。
データカタログの選定と導入には、組織の特性やニーズに応じて慎重な計画と選定が求められます。実際に検討される場合は、これらのポイントを押さえて検討することを推奨します。
まとめ
データカタログは現代のデータドリブン型組織において重要な役割を果たすツールです。データカタログの選定と導入は、効果的なデータ管理と活用に向けて慎重な計画と準備が必要です。この記事を参考に、必要に応じてデータカタログの導入、及び社内でのデータ活用の推進を検討してみてください。
弊社では「DWH&BI」の分野に対して30年以上取り組んでおり、非常に多くの実績があります。
BIツールやDWHの構築、データベースの性能についてお悩みの場合は、下記サイトをご覧ください。
BIツール「WebQuery」「Excellent」について
またデータマネジメントやDMBOKについてお悩みを抱えている方は、以下のホワイトペーパーを参考にしてみてください。
当ブログでは今後も引き続きデータ活用を中心に様々な情報発信をしてまいります。よろしければ他の記事もご確認いただけると幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。