知的財産高等裁判所でおこなわれる裁判とは?

皆さんは、「刑事裁判」がどういうもので、どのように行われているかというのは、映画やテレビドラマなどでよく取り上げられるので、なんとなくはご存知かと思います。

ただ、「知的財産権」に関わる裁判となると、ドラマでもあまり取り上げられないので、どの様な形で行うのか、ご存じないでしょう。

今回は、そういった「知的財産権」に関する裁判を取り扱っている『知的財産高等裁判所』と、そこで扱われている裁判について調べてみました。

権利争いの裁判

「知的財産権」に関する訴訟は、「刑事訴訟」と異なり、訴える内容によって『取扱先(裁判所)』や手続きのフローが変わります。

訴える内容は、著作者の権利に関する「特許権侵害」や、「特許権・商標の無効化の審決取消」など、様々です。

1.審決等取消訴訟

「特許庁」が行った審決に対する不服申立て。
行政である「特許庁」が下した審決・決定の取消し訴訟なので、民事訴訟ではなく、行政事件訴訟。

2.著作者の権利に関する 民事控訴事件

「技術型」と呼ばれ、具体的な技術権利に関するもの。

3.営業上の利益の侵害に係る 民事控訴事件

「非技術型」と呼ばれるもの。意匠権、商標権 等、権利に関する事件。

次に裁判の流れを見てみます。

1、2は、「控訴審」を『知的財産高等裁判所』が担当しています。

特許権利での判断ポイント

独自の技術を保有している企業はその技術の「特許権利」を得るために出願するわけですが、その際、技術に関する『要約』と『技術的範囲』の定義を記載して出願する必要があります。

『技術的範囲』の定義というのは、対象となる技術は幾つかの技術要素で構成されているので、それらをカテゴリー化することです。

例えば、「伸びて、自立する、ちりとり付き ほうき」を特許出願する際は、

  【区分1】 ほうき
  【区分2】 伸縮自在
  【区分3】 ちりとり付き
  【区分4】 自立型

といった感じに分類します。

特許権利の訴訟に関連した言葉で特徴的なのが『文言侵害』という言葉です。

これは、あくまで特許の侵害をしているかどうかを出願時の内容(文言)で判断するため、このような言葉となっているようです。

実際に訴えたときのポイントは先程の【区分】になります。

訴訟のターゲットとなっている技術を先程の【区分】という切り口で見たときに、【区分1】・【区分2】は該当していたとしても、【区分3】の技術が使われていないと判断されてしまうと、侵害に当たらないという判決がくだされるようです。

これは特許庁が定めている「特許」の定義にある

・ 『技術的範囲』 に記載された構成要件によって全体を規定

・特許権侵害を成立するには、原則として対象製品または対象方法が構成要件のすべてを満たすことが必要

・対象の要件が特許の構成要件の一部でも欠く場合には、特許権侵害には当たらない

に従い、判断されているためです。

そのため、【区分】に記載されている文言のひとつひとつ、句読点の有無によっても意味合いが変わってしまう為、『技術的範囲』の内容は意図しない別の解釈に捉えられない様、出願時に非常に気を使っているようです。

訴訟・係争への備えを

実際の判決では、多くの証拠が提出されますし、細かい解釈の検討がおこなわれますので、簡単には進みませんが、権利者・被告どちらの立場においても、有効な証拠となる、「自社技術の証跡」だけはしっかりと残して置くことが重要です。

技術情報を公開する前に、自社が保有している技術であることを証跡として付与しておけば、先使用権や所有権の有効な証拠となります。

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2020年9月25日