中国における知財訴訟リスクに備えるためには?

現状

日本企業の海外での事業展開の増加に伴い、中国をはじめ、海外での知的財産侵害を理由とする係争に日本企業が巻き込まれるリスクが増加傾向にあります。

特に中小企業は、係争の対応に要する多額の費用を用意することができず、事業撤退や会社の存続の危機に追い込まれる等のリスクが懸念される状況にあります。

そこで、特許庁では、日本のセーフティーネットとして、
 日本商工会議所
 全国商工会連合会
 全国中小企業団体中央会
 損害保険ジャパン日本興亜(株)
 東京海上日動火災保険(株)
 三井住友海上火災保険(株)
の協力を得て、日本初となる『海外知財訴訟費用保険制度』を創設し、中小の企業への保険加入の掛け金を補助する施策を打ち出しました。

特許庁のホームページより

2017年に中国の裁判所が受理した知的財産民事一般案件は、20万1千件となり、2016年より47%も増加しています!

知的財産訴訟における公証利用について

もし、中国での知的財産訴訟に備えるのであれば、証拠となる資料やデータに、中国の公証を取得しておくことが重要となります。

中国の公証とは、現地の公証役場で対象となる資料やデータを公証人に提出し、保管してもらうことです。

一応、公証を取得していない証拠でも、人民法院に提出することはできるようですが、信用度が低く、他の証拠によりその真実性を裏付けることができないとされ、採用されない場合もあるようです。

中国域内で入手した証拠であっても、人民法院に提出する際には、中国の公証を取得しておくことが望ましいとされています。

ちなみに、2012 年の民事訴訟法改正により、電子データが正式な証拠種類として認められました。

更に高まる電子データへの証跡付与

この先、インターネット技術や様々なサービスの登場により、ビジネスが世界中に展開されることがますます増えていきます。

それに伴い、電子商取引、オンライン・ツー・オフライン、インターネットファイナンスなどのインターネット取引に関係する法的な争いも急増しているようです。

中国でも、日本と同様に、電子データの証跡としては、「電子署名」、及び「タイムスタンプ」が法的に認められていて、実際にタイムスタンプが利用された証拠による判例が2015年から急激に増加しています。

ただ、現時点では、中国以外の国のタイムスタンプを付与した証拠を中国での訴訟の際に提出する場合には、タイムスタンプ自体ではなく、その周辺に関する情報を提示しないと証拠として認めてくれない可能性がありそうです。

タイムスタンプを付与した機関の資格、タイムスタンプの付与されたデータの時間性や非改ざん性を立証できる証拠やタイムスタンプを付与する過程がクリーンであることを証明する資料等も合わせて提出する必要がありそうです。

【参考】特許庁Webサイト 諸外国・地域における先使用権制度の調査結果

まずは、日本においても、研究開発段階から『電子署名』や『タイムスタンプ』により証拠を残しておくことが重要でしょう。