はじめに
BI(ビジネスインテリジェンス)の意味を検索すると、一般的に次のような検索結果が得られます。
「企業に蓄積されたデータの中から必要なものを収集・分析・加工して可視化することで、経営の意思決定に活用する概念や方法」
必要なデータを見やすく整理することで、ビジネスにおいて何を行うか決めるための手掛かりにする、ということですね。
それでは誰が情報を整理し、仕事でするべきことを決めるのでしょうか?
今回はBIという言葉が生まれた背景を知ることで、誰が情報を必要としているのかを考えていきます。
目次
- “business intelligence”という言葉の登場
- ビジネスにおけるコンピュータの普及
- 誰でも簡単に問題解決
- 終わりに
1. “business intelligence”という言葉の登場
問題です。
確認されている範囲で「business intelligence」という言葉が歴史上で初めて使われたのはいつでしょうか?
正解は1864年。
アメリカの歴史学者、リチャード・ミラー・デベンズ氏が書いた”Cyclopedia of Commercial and Business Anecdotes”(商業と職業にまつわる逸話の事典)に登場しています。
予想よりだいぶ古いですね。
(アメリカでは南北戦争の最中、日本では池田屋事件が起こった年です。)
その本の中でデベンズ氏は、銀行家であるヘンリー・ファーネス卿がライバルよりも早く自分を取り巻く環境の情報を手に入れたことで、「business intelligenceの完全で完璧な結果を維持した。」と書いています(注1)。
「business intelligence」が具体的に何なのかは明言されていませんが、情報を収集し活用することでよい結果を得るための知性、と解釈できそうです。
それでは、誰が「business intelligence」を実践していたのか。
具体的な方法は分かりませんが、様々な場所の情報を手に入れる手段を持っていたのも、得た情報をどう使うか決めるのもファーネス卿だったのではないでしょうか。
このように考えると、当時はBIという言葉が一般的ではないにせよ、経営の判断を行う上での手掛かりを集めるのも、それをもとに何をするか決めるのも組織のトップによって行われていたと推測できます。
(注1)Miller Devens, Richard “Cyclopedia of Commercial and Business Anecdotes” (1865)
※参照している資料は1865年だが、1864年に前の版が出版されている。
https://archive.org/details/cyclopaediacomm00devegoog/page/n262/mode/2up?q=business+intelligence
2. ビジネスにおけるコンピュータの普及
時は流れて第二次世界大戦後。
コンピュータの技術はビジネスの世界にも浸透していきます。
1951年に世界最初の商用コンピュータUNIVAC Iが発売されると、翌1952年にはIBM 社がIBM701を、1953年には量産に適した小型コンピュータ IBM650 を発表します。
そして1958年になるとIBMのハンズ・ピーター・ルーン氏が“A Business Intelligence System”という文章を発表します。
その中で「Business」 があらゆる職業を含んでいること、「Intelligence」を「提示された事実の相互関係を、望ましい目標に向けて行動を導くような方法で把握する能力」と説明しています(注2)。
この頃にはDSS(Decision Support System/意思決定支援システム)やMIS(Management Information Systems/経営情報システム)の研究が行われていました。
当時はまだコンピュータが高価で、経営者や専門家といった一部の人しか使うことができなかったため、何か分析してほしい情報がある部署は専門の部署に作業を依頼する必要がありました。
つまり、経営者は自分で必要な情報を得ることが可能でしたが、それ以外の人は情報分析する人と意思決定する人で分かれていたのです。
しかし当時のコンピュータのスペックでは分析・加工に時間がかかり、必要としている人のもとに情報が届く頃には情報の鮮度・価値が下がってしまっていました。
また依頼が集中することで、分析専門部署の負担が増大するという問題がありました。
このように経営者が分析や意思決定を行う一方で、情報分析へのニーズが企業で働く他の人々の間でも高まっていたのです。
そこで求められたのが情報の収集・分析・加工ができる人を増やすこと、それらにかかる時間の短縮でした。
(注2) H P Luhn. “A Business Intelligence System” (1958)
https://web.archive.org/web/20080913121526/http://www.research.ibm.com/journal/rd/024/ibmrd0204H.pdf
3. 誰でも簡単に問題解決
1980年代から1990年代になると、先述した課題を解決するために専門家以外がPCを操作し、自分の仕事に役立てるという考えのEUC(End User Computing/エンドユーザーコンピューティング)や、「意志決定のため、目的別に編成された時系列に統合されたデータの集合体」であるDWH(Data WareHouse)が登場しました。
また大量のコンピュータを企業が導入できるようになり、様々な人がデータを活用できる環境が整ってきました。
そして同時期にアメリカのアナリストであるハワード・ドレスナー氏(1989)が、現在用いられている意味でBIを定義したと言われています。
ここで提唱されたBIは、企業で働く誰でも情報の収集・分析・加工をすることで、問題を解決することができるというように定義されます。
重要なのは誰でもできるようになった、つまりそれほど簡単に素早くできるようになった、という点です。
先述したように、それまでは組織のトップが意思決定を行ったり、専門家が情報の分析や加工を行ったりしていました。
しかし技術の発展とともに、最も情報を必要としていたエンドユーザーが自身の必要なタイミングで情報収集・分析・加工をし、現場で何をすべきか決めるのに、得た情報を活用できるようになりました。
データを得るまでの時間を短縮されたことで、情報の価値を落とすことなく必要な人のところまで情報が行き渡り、素早く意思決定をすることが可能になったのです。
4. 終わりに
いかがだったでしょうか。
個人的には情報を意思決定に活かす立場がどんどん現場に近づいていったことが印象的でした。
歴史を通してみると、現代のビジネスにおいて情報を必要としている人は組織のトップだけでなく、企業で働くすべての人ということが理解できます。
きっとその現場の意思が組織の上部に反映されたり、またその反対であったり、組織内で上からや下からの一方通行ではなく循環が起きると、よりよいビジネスの結果が得られるのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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