在宅でのテレワークが推進されている中、注目を集めているのが印鑑の問題です。
業務のほとんどをテレワークで対応できても、最終的には代表者印や会社印を押すために、わざわざ出社するケースも多いようです。
以前に比べて電子契約サービスはより一般的になり、この機会に電子契約の導入を検討されている企業様も多いのではないかと思います。
そこで、今回は電子契約サービスを選定する際のポイントをご紹介したいと思います。
電子署名は必要か?
電子契約サービスを選択する場合の一番重要なポイントは、電子署名が必要かどうかの判断です。
契約によっては、契約相手とのトラブルが発生し、最悪の場合、裁判にまでなってしまうリスクが潜んでいる契約もありますし、このようなリスクがほとんど無い契約もあります。
当然ながら、リスクがある契約の場合、電子署名による電子契約を推奨します。
一方リスクがあまり無い契約については、電子署名は不要かもしれません。
※電子署名の必要性については、こちらのブログをご参照ください。
『じゃあ、全部、「電子署名」でおこなう電子契約で締結すればいいんじゃない?』となるかもしれませんが、「電子署名」による電子契約には良いところもあれば、デメリットもあります。
電子署名のメリット
電子署名法に基づいた電子署名があれば、トラブルが発生したときには強力な証拠力を発揮します。
電子署名のデメリット
電子証明書の取得に際しては、本人確認書類(免許証のコピーなど)の提出が必要です。また、電子証明書の取得には費用がかかります。
誰の電子証明書を使うのか?
電子署名に使用する電子的な印鑑を電子証明書といいます。
電子証明書は今のところ個人に対してしか発行できない為、誰の電子証明書を使用するかを決める必要があります。
電子契約においても一般的には紙の契約書と同様に、法人代表者の電子証明書を使用することが多いのですが、契約書毎に社長のAさんや部長のBさん、支店長のCさんなど、複数の電子証明書を使い分けることも可能です。
また、電子契約サービスの中には、契約当事者以外の第三者の電子証明書を使用している場合がありますので、注意が必要です。
電子署名を使わないパターン
電子契約サービスの中には、電子署名を使わないサービスがあります。
では、電子署名の代わりに何を使うのでしょう。
代表的なものとして、電子印鑑と電子サインがあります。
電子印鑑と電子サインを使用する場合、本人確認書類の提出が必要ではありませんので、手軽に利用することがきますが、法律の裏付けがないことに注意が必要です。
つまり、リスクの高い契約書を対象とすることは、あまりお勧めできません。
マイナンバーカードの電子証明書
最近話題のマイナンバーカードには所有者本人の電子証明書が内蔵されています。
この電子証明書を電子契約に使用することもできますが、これは主にBtoCの電子契約に使われています。
現時点では、マイナンバーカードの普及率はそれほど高くありませんが、今般の状況から急速に普及することが予想されますので、マイナンバーカードを使用した電子契約についても今後導入が進みそうです。
電子契約サービスは一見すると、どのサービスも同じように感じるかもしれませんが、「電子署名」というポイントに絞って比較することで、サービスの違いが判りやすくなると思います。
最近の動向
先日、内閣府が主催する「第10回 成長戦略ワーキング・グループ」が開催されました。
そこでは、「電子署名法」に関する議論がおこなわれたようです。
配布資料は、以下のサイトにアップされています。
第10回 成長戦略ワーキング・グループ 議事次第 (内閣府ホームページ)
特に注目すべきは、「電子契約事業者が電子署名をおこなうサービス」についての総務省、法務省、経済産業省のコメントです。
電子署名法第三条に記載されている「電磁的記録の真正な成立の推定」(以下、推定効)が、電子契約事業者が「電子署名」をおこなっても有効になるよう、検討すべきという事業者からの問いかけに対して、たとえ、利用者の指示を受けたものだとしても、契約書作成者本人による電子署名でなければ推定効は働かないと回答しています。
ただし、裁判になったときに、電子契約事業者が該当の電子契約について真正に成立したものであると立証してくれれば、有効な電子契約であると扱われるかもしれないとの記載があります。
つまりは、電子契約サービスを提供している企業が利用企業の係争をサポートしてくれれば大丈夫ということのようです。かなりハードルは高いですね。
まとめ
やはり、契約ごとのリスクを分析し、リスクのレベルに応じて、最適な電子契約を選ぶ必要があるでしょう。
使い勝手のよいサービスということは、つまり、手続きが簡素なので本人確認の手続きなどが簡略化されている可能性が高いですので、ご留意ください。